怪我が治っても痛いのはなぜ?
通常、痛みが起こるためには、組織が損傷するなど侵害受容器(受容器)が興奮するか、神経そのものが直接興奮するかのいずれかが必要です。しかしながら、慢性痛になると痛みの原因がすでに治り、侵害受容器や神経線維がもはや興奮していないにもかかわらず、痛みを起こすことがあります。
一般的に痛みは、侵害受容器が興奮することで電気信号を作り出し、それを神経線維が脊髄まで伝え、脊髄でシナプスを介して、脊髄・脳へと情報を伝えています。
通常、神経の興奮がなければシナプスで科学的な物質を産生することはありませんが、大ケガなどで神経が長期間、興奮すると、シナプスが神経からの刺激がなくても興奮してしまい、刺激が伝わってしまうことがわかりました。
これを長期増強(LTP)と呼んでおり、その機序にはwind-up現象が大きく関与します。痛みを伝えるC繊維が繰り返し刺激されていると、NMDA受容体を働かないようにしていたMg²⁺が外れ、細胞内にCa²⁺が流入します。
Ca²⁺の濃度が上昇するとキナーゼと呼ばれる酵素を活性化することでNOが放出され、神経の刺激がなくてもシナプス前繊維を興奮するため、神経伝達物質が放出されます。
この神経伝達物質の放出はしばらく続くため、神経からの刺激がなくても興奮してしまうのでです。逆に神経が繰り返し刺激されて興奮性が低下する長期抑制(LPD)もあります。
このように、シナプスの伝達に変化が見られることを神経の可逆的変化と呼んでいます。
・慢性痛の原因にはシナプスが大きく関与している
・神経が繰り返し刺激されると、刺激なしにシナプスが興奮する
・シナプスの長期増強のような現象を神経の可逆的変化と呼ぶ
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